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高木正勝展「Ymene」

Masakatsu TAKAGI

Masakatsu TAKAGI

 

 

 

2年ぶりとなります今回の個展は[Ymene (イメネ)]と題し、同名の新作映像作品を発表いたします。所謂コミッションワークではない映像作品の発表も、同じく2年ぶりとなります。

[Ymene]とは作家の造語で、『夢の根』という意味で、前身となる近作コミッションワークがふたつあります。
まずひとつは2008年には多摩美術大学芸術人類研究所との共同制作による、神話や死後の世界を一人の女性と一頭の白馬で表現した[Homicevalo]。この作品は、馬と娘の悲劇的な恋愛を物語る「馬娘婚姻譚」の神話(日本では『オシラサマ伝承』として知られています)を参照しながら、馬と人間の関係について新しい神話を表現する試みでした。

もうひとつは独立行政法人理化学研究所とのコラボレーション作品で、生命の誕生をテーマにした[NIHITI]という作品です。共同制作をした理化学研究所発生・再生科学総合研究センターは、細胞に関する研究をしている機関ですが、高木が作品制作をするにあたり、細胞の話を聞いたり、細胞の在り様を見たことに由来しています。タイトルはポリネシア語で「虹」という意味です:

(前略)何もなかった空気の中に水と光の関係で突然虹が現れるのと、細胞の姿を顕微鏡でのぞくのは同じ事 なんだなと思いました。普段見えないものを見えるようにする。
本来あるものを感知できるようにする。(中略)それぞれの生き物では世界の見え方や感じ方も違いますし、本当の世界の在り様なんてものは、結局の所、分からない。宇宙は人間が感知できない暗黒物質で溢れているらしいですし。僕たちは残念な事に、今感じている世界の外側になるものを身体一つで感じ取る器官や感覚を
持ち合わせていない様に思えますが、新しい考え方や感じ方、捉え方が分かれば、世界を違う形で感じ取れると信じています。

細胞を知る前、高木が持っていた感覚器官というのは頭か心でした。ところが細胞の生き様を見せられ、そういうもので自分が構成され生かされているのだと知った後、頭と心の他に、細胞でも感動しているのだということを知ったそうです。例えば、台風の前の大荒れの海を目前にしたとき、ヒマラヤの山頂で満点の星空を見たとき、必ずしも心地のいいものではなく、爪の先までビリビリ震える、懐かしい様な恐ろしい様な幸せな様な、なんとも形容しがたい感動で、そのような圧倒的なものを前にしたとき、感じているのはまさしく細胞ひとつひとつでした。

神話や死後の世界をテーマにした[Homicevalo]から、細胞の感覚を捉えようとした作品[NIHITI]へと至り、その続編というべき作品が今回発表する新作、[Ymene]です。

作家が旅先にて無心で撮れるものを撮りため、その偶然出会った光景の一瞬を取り出し、それを素材にアニメーションをつくるように一枚一枚手を加え作品を制作します。
作品は必ずしも作家が意図した結果にはなり得ず、むしろすべてをコントロールできるようならば、それは自分が理想とする作品にはならない。作家は作品を前にして受け皿になるべきで、どんなものを受け取って、どのように吐き出せるか、そこにしか作家の才能は活かせないものだ、と高木は語ります。

映像は頭の部分から作り始め、終わりは作品自体が知らせてくれるといい、映像を完成させた後、高木作品の大きな魅力の一つである『音』を付けていきます。『音』は映像だけでは足りない、もしくは加えることでより強い何かが生まれる地点を探りながら、絵具で色を足すように付けていきます。

高木の作品は、鮮やかな色彩がするすると滑るように広がり、一見美しいのですが、同時に恐怖や儚さを孕んでいるように見えます。その独特の世界が『夢の根』とつながった時、どのような風景が広がるでしょうか。

 

 

 

Masakatsu TAKAGI

 

 

 

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